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人はなぜ勉強するのか? (11)

 

英語がわかると楽しみ倍増 ウォーキングデッド編②


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前回の人はなぜ勉強するのか?(10)では、アメリカの海外ドラマ『ウォーキング・デッド』から、「学ぶことで人生の豊かさにつながる」と言うお話をしました。今回はその続き。

 

前回、あるグループが、ゾンビのことを「walker(ウォーカー)」(歩く人)と呼んでいて、別のグループは、「biter(バイター)」(噛みつく人)と呼んでいた時、「biter」と呼んでいたグループのメンバーが「walker」と呼ぶグループに入ると、その呼び方も「walker」に統一されるというお話をしました。

 

ところが面白いことにグループが一緒になっても、呼び方を変えないグループもあるのです。

 

ほんの数人しかいないグループなのですが、そのグループはゾンビのことを「psycho(サイコ)」(異常者)と呼んでいます。「walker」と呼ぶグループに入っても、ゾンビのことを「psycho」と呼び続けています。

 

実は、このグループには一人耳が聞こえず、話せないメンバーがいます。そのメンバーと他のメンバーは手話でコミュニケーションを取っています。ちなみに日本の手話とアメリカの手話(American sign language)は違うので、日本の手話を知っている方でもアメリカの手話は別に学ぶ必要があります。手話も立派な言語なので、できたら世界が広がりますね。

 

話を元に戻します。普通は、グループに属するメンバーがあるものを「○○」と呼んでいるからという理由で、そのものを「○○」と呼び始めるというのが言語成立の一番でしょうけれども、このグループの一人は周りがそれを「○○」と呼ぶのが聞こえないのです。当然、それを「○○」と認識できません。それより今までの呼び方の方が楽にコミュニケーションが取れるので、呼び方が変わらずに別のグループの呼び方に統一されていないのでしょう。

 

それでも、みんなで集まった時にでも、「ここではみんなが『psycho』のことを『walker』と呼んでいるから、これからは『walker』と呼ぼう」と話し合えば言葉を統一できるのでしょうけど、彼らはしていないようです。

 

彼らは今まで協力して生き残ってきて、メンバー同士の結束が強く、お互いを強く信頼しています。言葉を変えないということは、今までのグループの歴史にも関わることですから、その結束力の強さを象徴しているとも言えるのではないでしょうか。

 

言葉は文化ということを再認識させられます。

 

そして、これもまた面白いのですが、のちにこのメンバーも元々「walker」と呼ぶグループのメンバーと話をする時はゾンビを「walker」と呼びます。その都度コミュニケーションを取るのに便利な呼び方をしているのです。

 

最後に、英語を理解できていると面白さが倍増する例を一つ。

 

シーズン1で主人公のリックは「walker」に囲まれたビルから出なければなりませんでした。「walker」の死臭をまとえば「walker」に気づかれずに無事に歩くことができるので、「walker」の遺体(元々死んでいるので遺体と言う表現は適切ではありませんが)から内臓を取り出して、服にこすりつけます。これで「walker」のにおいを体に付けるのです。

 

遺体から内臓を引き出す様がグロテスクなのと、腐敗したにおいがあまりにきついのと合わせ技でやる気を失くしているメンバーにリックは、

We need more guts

と言います。

 

字幕の日本語訳では「もっと内臓が必要だ」という訳になっていました。「guts」は「内臓、小腸」という意味なので正しいのですが、「guts」には「根性、ガッツ」という意味もあるので、「もっと根性が必要だ」という意味もかかっているのです。

 

翻訳の人もわかっているでしょうが、字幕で説明するわけにもいかずに悔しい想いをしているに違いありません。完全な翻訳は無理だと実感したのではないでしょうか。

 

それでも英語を理解している人には「うまい」と思わせるせりふです。こうして、勉強しているとわかることが増えるのです。これは人生をより豊かなものにすると思います。

 

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