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人はなぜ勉強するのか? (19)

 

人間の使命

 

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「人はなぜ勉強するのか」という問いをずっと考えていると、いろいろな意見やヒントにぶつかります。やはり意識して考えていると、答えは至るところに転がっていると気づくものです。

 

今回はマンガでした。

 

YAWARA」でおなじみの漫画家浦沢直樹の作品である「MASTERキートン」です。

 

その第3巻の中で、主人公の平賀=キートン・太一 は、廃校が決まっている社会人学校の最後の授業で、生徒たちに語りかけます。

 

「人間はなぜ学ばなければならないのでしょう?」

 

ここで、その教室にある壁画を視察に来た大臣一行の傍若無人な振る舞いに、まだ授業中だと一喝して話を続けます。

 

「人間は一生、学び続けるべきです。人間には好奇心、知る喜びがある。肩書きや、出世して大臣になるために、学ぶのではないのです… では、なぜ学び続けるのでしょう?それが人間の使命だからです。」

 

「使命」とは、辞書を引くと「自分に課せられた重大な任務」と書いてあります。「人間の使命」ということは「人間に課せられた重大な任務」ということなので、何やら大層なことのように聞こえます。

 

小中高生には、「『人間に課せられた重大な任務』だから人は学ぶのだ」と言っても、なかなか響かないでしょう。

 

それでも、大人には響くのです。この物語の中でも社会人学校の生徒に対しての発言であることからもわかるように、一度社会に出て、学び直したいと意欲を持った人間ならば、その意味がよく理解できるのです。

 

確かに、大人は受験もなければ、確認テストもありません。学生より気楽に勉強に向き合えるでしょう。ましてや、自分で興味のある分野を選んで、学び直しをできるのでモチベーションが高いのも当然です。生徒たちの「興味のない勉強はしたくない」という声が聞こえてきそうです。

 

生徒たちにとって、「重大な任務」とは、目の前の確認テストや定期テストで結果を出したり、受験を突破し志望校に合格することだったりするのです。

 

この「大人世代」の感覚と「学生世代」の感覚のギャップが問題の根源のようです。

 

しかし「大人世代」もかつては「学生世代」だったわけで、少しは気持ちが理解できるのではないかと思います。実は「大人世代」はわかっていて、自分たちの「学生世代」の反省も込めて、勉強しなさいと「学生世代」の人に言っているのです。

 

 

その証拠に「学生世代」の人も、あと何年かして「大人世代」になったら、その時に「学生世代」の人たちに勉強しなさいと言ったり、なぜ勉強しないのかと首をひねったりしていると思います。未来のことなので、まだわからないでしょうけど、歴史はくり返しますから。

 

「大人世代」は、大人になったからこそわかった学ぶ喜びや楽しさを積極的に「学生世代」に伝えていくべきだと思います。学んだことを次の世代、また次の世代につなげてきた結果、今現在があるのです。これこそ「人間に課せられた重大な任務」です。そして、そこに人はなぜ勉強するのかという問いの答えの一つがあると思います。


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