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人はなぜ勉強するのか?(25)

 

Do you have a watch?


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前回の人はなぜ勉強するのか?(24)の最後で、「『Do you have a watch?』を日本語にしてください。」という質問をしました。

 

正解は、「今何時ですか」です。

 

質問する相手は、あなたが時計を持っているかどうかを知りたいのではなく、今の時間を知りたいのです。

 

普通の問題の答えであれば、「あなたは腕時計を持っていますか」という答えで良いと思います。

 

むしろ、解答にはそう書かれているでしょう。だから「今何時ですか」と答えた生徒は不正解になってしまうかもしれません。

 

しかし、私に言わせれば、誰が何と言おうと両方とも正解です。

 

有名な話に、夏目漱石は「I love you.」の日本語訳を「月がきれいですね」としたというのがあります。

 

「私はあなたを愛している」と言う文化が日本には無いというのが、その理由のようです。

 

言語は「文化」と密接に結びついています。だからこそ、完璧な外国語の翻訳はできないと言われるのでしょう。

 

「文化」の異なる外国の言葉を自分の国の言葉に翻訳するのですから、とても難しいことです。

 

それゆえに、正解は一つではないのです。一つでなくて良いのです。

 

言語学的に直訳したもの(「私はあなたを愛している」)を正解にしても良いですし、「文化」を考慮に入れた(「月がきれいですね」)を正解にしても良いでしょう。

 

会話の中での使われ方から、「Do you have a watch?」を「今何時ですか」と訳すのもまた正解なのです。

 

こういうことを楽しんで勉強して欲しいなと思っているのですが、目の前に宿題やテストがある生徒にとっては、なかなか大変なことかもしれません。

 

それでも、いつか「『今何時ですか』を英語にしなさい」という問題で、「What time is it now?

という答えの代わりに、

 

Excuse me but… do you have a watch? I mean do you know what time it is now?

(すみませんが…時計をお持ちですか。 いや、なんと言うか、今何時かを知っていますか。)

 

なんて解答用紙に書いてくれる生徒が現れたら、私はめちゃくちゃうれしいです。


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