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人はなぜ勉強するのか?(6)

 

楽しく会話するために  サッカーの話

 

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人はなぜ勉強するのかということについて考えてきましたが、勉強といっても学校で学ぶことだけが勉強ではないと私は思っています。今回は、サッカーの知識も役に立つというお話をします。

 

数年前の81日のことです。今年は新型コロナウィルスの影響で中止になってしまいましたが、函館において81日は花火大会の日です。私が家族と市電の谷地頭駅で電車を待っていると、1人の外国人が私の前に並んでいる10人くらいの人に次々と話しかけていました。

 

その外国人は、1人ずつに英語で話しかけていましたが、みんなに断られ続けていました。私は列の最後尾にいたので、ずっとその様子を見ながら「ここまで来い」と思っていました。

 

ついに私のところに来ました。その外国人は、とてもきれいな英語で私が英語を話せるか聞いてきました。

 

私が話せると伝えると、彼は市電の乗り方を訪ねてきました。

 

私も経験がありますが、異国の地で公共交通機関に乗るときほど大変なことはないです。それぞれの場所で当たり前のような乗り方のルールが外国人には当たり前ではないからです。どこから乗るの?料金はどう払うの?どうやって降りるの?不安しかないでしょう。

 

その外国人は、切符(チケット)をどこで買うのか聞きたかったようです。

 

私は、切符を買う必要はないことと降りるときに料金を払うことを教えました。

 

次に彼はなぜみんなが浴衣を着ているのか尋ねてきました。

 

その日が花火大会であることを知らなかったようです。ですから、花火大会があることや駅前で降りると花火が見られることやお祭りのことなどを伝えました。

 

相手の質問に対して答えるだけであれば、これくらいの会話で終わってしまったはずです。しかし、まだ市電は谷地頭に到着していません。袖振り合うも多生の縁。私は会話を続けようとしました。

 

まず、どこから来たか尋ねました。王道の質問です。その答えはフランスのマルセイユでした。

 

問題はここからです。みなさんは、マルセイユについて何を知っているでしょうか。日本人には、あまりなじみがないと思います。私も南フランスの町くらいの知識しかなく、会話を広げるのは難しいと思っていました。

 

ここでサッカーの知識が役に立ちます。サッカー日本代表の酒井宏樹という選手がマルセイユのチームに所属しているのを思い出したのです。そのフランス人がサッカーに詳しいかわかりませんでしたが、他に話すネタもないので思いきって、酒井宏樹選手を知っているか尋ねてみました。

 

なんと彼は酒井宏樹選手を知っていたのです。そこでしばらくサッカーの話、酒井宏樹選手の話で盛り上がりました。話を進めていくうちにわかったことですが、彼はスポーツジャーナリストだったのです。彼が地元サッカーチームのサッカー選手である酒井宏樹を知らないはずはなかったのです。そして、世界各国の選手にインタビューをするからでしょうか、フランス人にとっては母国語ではないはずの英語がとてもきれいで上手だったことに納得しました。

 

どんな知識が役に立つかわからないものです。学校で学ぶ内容だけではなく、自分で興味を持ったことを調べたり、学んだりしていくとどこかで役に立つかもしれないのです。

 

勉強せず、知識がないと友だちや新しく出会う人と会話を続けることができないので、「人と楽しく会話するために勉強する」という言い方もできるかもしれません。これも人はなぜ勉強するのかという問いの答えの一つと言って良いと思います。そして、そのときの知識というのは必ずしも学校で習うようなことでなくても良いのです。


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