アファーマティブ・アクション①
差別問題を考える上で、アファーマティブ・アクションについて知ることは避けて通れないと思います。
アファーマティブ・アクションとは、ジーニアス英和辞典によると「積極的差別是正措置」と日本語訳されます。
英語では、affirmative
actionと書くのですが、affirmativeは「肯定的な、積極的な」という意味で、actionは「行動、活動」という意味です。
広辞苑によると、アファーマティブ・アクションとは「社会的な差別によって不利益を受けている女性・少数民族・障害者などに対し、実質的な機会均等を確保するための措置」となっています。
また「特にアメリカで、1964年公民権法成立後、政府が雇用や教育について採用した黒人や女性などに対する優遇政策をいう。」とあります。
具体的には、大学の入学や就職、昇進に際し、被差別人種(差別を受けてきた人種)の人数枠を確保したり、採用基準を下げたりします。
私が生徒にアファーマティブ・アクションの話をすると、生徒は必ず「逆に差別じゃないの?」と聞き返してきます。
実は、affirmative
actionという英語はNorth American English(北米英語)といって、主にアメリカやカナダで使われる英語です。
オックスフォード現代英英辞典によると、British
English(イギリス英語)では、positive
discriminationと言うようです。
positiveは「積極的な、肯定的な」と言う意味で、affirmativeと同じ意味です。discriminationは「差別」という意味なので、直接的に訳してしまうと「積極的差別」となります。
今まで優遇されてきた人種を「積極的」に「差別」することで、被差別人種(差別を受けてきた人種)を優遇しようという措置なのでしょう。
オックスフォード現代英英辞典には、もう一つ類語があります。reverse discriminationといいます。reverse は「逆の」という意味で、discriminationは「差別」という意味なので、日本語訳すると「逆差別」となります。
まさに生徒が指摘するように「逆に差別」なのです。
私がアメリカにいた時に友だちのお父さん(白人)に話を伺う機会がありました。
友だちのお父さんがある会社に就職する時にもう一人ライバルがいたそうですが、そのライバルがアフリカ系アメリカ人であったために、そちらが採用されたそうです。アファーマティブ・アクションは逆差別だと怒っていました。
実際の採用時に何があったかは知る由もありません。アファーマティブ・アクションによって、そのアフリカ系アメリカ人が採用されたかもしれませんし、友だちのお父さんよりライバルのアフリカ系アメリカ人の方が優秀だったために採用されたかもしれません。
しかし、いづれにしても双方に禍根が残ってしまうのも事実です。
白人の側には、アファーマティブ・アクションは逆差別だという思いになり、アフリカ系アメリカ人に対する憎しみを生むかもしれません。また、自分の能力が劣っていたとしてもそれに気づくことなくアファーマティブ・アクションのせいにしてしまうかもしれません。
少数民族の側には、自分がどれだけ優秀だったとしても、採用された理由がアファーマティブ・アクションであるということになってしまう恐れがあります。能力が優れていても認めてもらえず、逆に白人から恨まれることもあるかもしれないのです。(つづく)