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人はなぜ勉強するのか?(45)

 

アファーマティブ・アクション②


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前回の人はなぜ勉強するのか?(44)では、友達のお父さんの就職時の例を取り上げ、アファーマティブ・アクションは双方に禍根を残す可能性を指摘しました。

 

そしてこれを知った多くの人がアファーマティブ・アクションなどをせずに、社員の採用時に今までの経歴や資格などの能力だけで純粋に比較して決定すれば良いじゃないかと思ったのではないでしょうか。

 

すべての白人が差別するわけではありませんので、アファーマティブ・アクションのようなあからさまなかたちでの逆差別を助長するような制度にしなくても良いのではないかというのは、一つの意見としてはあってもいいのですがまだ一面的です。

 

私がこの「人はなぜ勉強するのか?」で述べたいことの一つは、いろんな意見を知り、事実を勉強して、独善的で一面的な人間ではなく、バランスの取れた人間になることが重要だと思っているので、様々な意見を紹介していきます。

 

アファーマティブ・アクションの考え方は、制度的には大学の入学や社員の採用・昇進に際して被差別人種(差別を受けてきた人種)を優遇しようということなのですが、被差別人種(差別を受けてきた人種)は大学入学の合否判定、社員の採用の時点ではなく、それまでの間に社会的、環境的に差別を受けてきたので不利だという考えなのです。

 

生まれてから大学入学時、就職時までに差別によって社会的環境が悪かったであろうから、その分を考慮して格差を是正するために大学入学の合否判定、社員採用の時点で優遇しようということです。

 

住んでいる場所や生まれた家の環境などが教育の格差を生むということが、比較的貧富の差が少ない(今は貧富の差が拡大していると言われていますが)と信じている日本人にはあまり理解ができないことかもしれません。

 

少なくとも日本の公教育は、誰でもどこでも一律に高度な教育が受けられる環境を与えてくれています。また、日本の国民皆保険制度も誰もが享受できる恩恵なので、住んでいる地域によって社会的環境が変わり、それが教育の格差を生むという考えはピンとこないでしょう。

 

日本と違い外国からの移民が多いというのもアメリカの特徴です。

 

アメリカの大学の寮には、移民で貧しいので保険に加入できないから骨折しても病院に行けないと真顔で言う学生がいました。日本では考えられないことでしょう。

 

それでも、これがアメリカの現実なのです。その現実を知ることなしに、問題を議論したり、解決策を提示したりすることはできません。何も知らずに「アファーマティブ・アクションは白人に対する逆差別だ、即刻やめるべきだ」と言えば内政干渉になります。

 

一見、逆差別のように見えるかもしれないけれども、そこまでしてでも被差別人種の人数枠を確保することが問題解決の第一歩だと考えているようです。

 

それくらい差別問題は根が深く、一朝一夕に解決するような問題ではないのです。

 

だからこそ、私たちはしっかりと現実に向き合い、事実を正しく学び、それを多くの人に伝えて、いつの日かこの世が差別の無い世界になるように努力し続けなければなりません。


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