スキップしてメイン コンテンツに移動

人はなぜ勉強するのか?(91)

 


 歴史を学ぶ意義  ペストの大流行



                目次へ               


前回の人はなぜ勉強するのか?(90)では、「認知」あっての「メタ認知」なので、わからないことはググればいいという考え方は非常に安易だというお話をしました。また、歴史は特に「ネットで調べればわかることをわざわざ暗記させる」教科と生徒に思われる傾向が強いというお話もしました。しかし、コロナ禍に苦しむ現代では、かつてのペストやスペイン風邪のような感染症の歴史を学んで現在の困難な問題の解決に生かそうとしています。


14世紀から500年近くの間ヨーロッパを中心に繰り返し流行したペストは、最近さまざまなメディアで取り上げられています。特に14世紀のペストは、当時のヨーロッパの人口の三分の一に当たる3000万人、全世界で2億人が亡くなるほどだったそうです。


一般的に、14世紀のペストは中世ヨーロッパを変革させたと言われています。多くの人が亡くなり、労働人口が減ると当然、その少なくなった働き手を求めて雇い主は賃金を上げます。需要が変わらず、供給が少なければ価格が上がる原理です。レア(希少)なものは、高値で取引されると言ったほうがわかりやすいかもしれません。


賃金が上昇し、労働者の地位が相対的に向上して、農奴制に基づく荘園制が崩れていきました。また、ペストの流行を抑えられなかった教会の権威が失墜し、これで封建的身分制度は崩壊していくのです。多くの人々にとって当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなっていった時代でした。


コロナ禍の中にいる私たちも漠然と同じような感覚を持っているのではないでしょうか。


その後のヨーロッパは、ルネサンスを経て、近代ヨーロッパに変貌を遂げていきます。


また、17世紀半ばにロンドンで大流行したペストのせいで、かの有名なアイザック・ニュートンは、通っていた大学が閉鎖され、故郷に戻ることを余儀なくされました。その大学の閉鎖期間中に微分・積分や万有引力などの偉大な発見の着想を得たというのは有名な話です。


歴史を学ぶと感染症の大流行でさえも、悪いことばかりではないと知ることができます。


「GAFA」と呼ばれるアメリカのIT大手4社(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の2020年10~12月期決算が、いずれも売上高と最終利益が過去最高になったそうです。


新型コロナウイルスの感染拡大で、航空業界などの観光産業や飲食業界が苦戦する中、巣ごもり需要の拡大で売上・利益を伸ばす会社や業界があるのです。


「ピンチの後にチャンスあり」というのは、あまりにも使い古された言葉ですが、どんなに困難な世の中でも希望の光はあって、その光を見出すことができるかどうかなのだと教えてくれているような気がします。


コロナ禍の大学生はオンラインで授業していますので、休暇をとって実家でゆっくり思索にふけるなんてことはないかもしれません。それでも、世界を変えるような新しい発見をしてくれると期待しています。



                     目次