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人はなぜ勉強するのか?(92)

 


 感染症の流行は変革のチャンス  顕在化した問題を解決できるか



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前回の人はなぜ勉強するのか?(91)では、14世紀のペストが中世ヨーロッパを変革させ、近代ヨーロッパへのきっかけになったというお話をしました。


また、17世紀半ばにロンドンで大流行したペストのせいで、アイザック・ニュートンは、通っていた大学が閉鎖され、その大学の閉鎖期間中に微分・積分や万有引力などの偉大な発見の着想を得たというお話もしました。


もちろん、ペストによる大学の閉鎖がなくても、ニュートンはこれらの偉大な発見をした可能性はあります。むしろ、実際より時間がかかったかもしれませんが、きっと発見に成功したでしょう。


なぜならば、ニュートンは何もないところからペストによる大学の閉鎖期間中に突然偉大な発見をしたわけではないからです。それ以前からずっと考えて、研究していたことをペストによる大学の閉鎖期間をきっかけに、より長い時間を研究に使えるようになった結果、それまでの努力が実を結んだのです。


前回の人はなぜ勉強するのか?(91)で、どんな困難な世の中でも、希望の光はあるというお話をしましたが、何の努力もせずその光を見出すことはできないはずです。困難な問題に向き合い、その解決のために今までの知識や経験を活用して考えるのです。「メタ認知」の出番です。


全く新しい問題の解決策ですから、「答え」が載っている教科書はありません。つまり、知識(「認知」)だけでは対抗できないのです。


前回の人はなぜ勉強するのか?(91)で述べた中世ヨーロッパの変革も、何の前触れもなくペストだけをきっかけになされたわけではないのです。確かにペストは、変革を加速させたことは事実でしょう。むしろペストは、それまでにあったさまざまな問題を顕在化させ、変革を加速させたという方が正しいかもしれません。


新型コロナウイルスもペストと同様、元々あった問題を顕在化させています。人種問題、経済格差問題、世代間ギャップの問題、ネットによる誹謗中傷など、これらの問題はコロナが生み出した問題ではありません。


それまで確かに存在していた問題が、コロナによって浮き彫りにされ、今では誰もが気づくレベルで明らかになっただけです。


歴史を学ぶと感染症の大流行でさえも、悪いことばかりではないと知ることができました。今、図らずもコロナのせいで、これらの問題が明らかになり、議論できる環境になりました。大いに議論し、問題を解決できたら、コロナも悪いことばかりではなかったと後世の歴史家が評価する日が来ると信じています。


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