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人はなぜ勉強するのか?(86)

 


  クイズ番組にみるメタ認知



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前回の人はなぜ勉強するのか?(85)では、予習・復習、勉強方法は千差万別で、どれが自分に合うか、途中で合わなくなった時にどう対応するかは、「自己を冷静に分析できるか」どうかが重要だというお話をしました。


自分の中の客観的な『自分』が自分を冷静に分析するのは、まさに『メタ認知』です。


最近は、現役の東大生や卒業生がメディアに登場して、さまざまなクイズ問題を解いているのをよく見かけます。


私が非常に興味を持ったのは、彼らが自分の思考を言語化して説明しているところです。


彼らの思考は通常の合理的な判断をする人間からすれば、ごくごく当たり前の思考経路をたどっています。ただ、通常はそれを頭の中で「自分の中の客観的な『自分』」と『会話』するので、他人が知ることはありません。


それを彼らはメディアを通して他人に伝えているのです。私たちが学ぶことがあるとすれば、ここです。


一般的に頭が良いとされている人間が、何を考えているのか、どのように考えているのか、どういう思考経路で正解にたどり着いているのかを知ることができるのです。


彼らの自分の中の客観的な『自分』との『会話』をよく聞いていると、「違うな」とか「そうじゃないか」といった自分の思考に対して疑問を投げかける場面が多々あります。そして、その都度なぜその考え方が間違っているのか『自分』に対して説明しています。


これこそ「メタ認知」です。


一般的なクイズ番組は、「知っている」か「知らない」かが問われます。「知っている」なら正解し、「知らない」なら不正解になるでしょう。このような知識の有無は「認知」です。以前の人はなぜ勉強するのか?(80)での「認知」と「メタ認知」の違いを紹介します。


学んだことを覚えているだけでは、それはただの「物知り」です。その学んだ内容が何を意味しているのかという本質的な部分を考えたり、どう使うかという実用的な部分を考えたり、さらに上の次元へ思考を進めようというのです。


「物知り」が認知だとすれば、その認知を上の次元へ思考を進めて超越したものが、まさに「メタ認知」なのです。


その番組の司会者は、最初の問題で、漢字の送り仮名の問題ということもありましたが、問題を考えている解答者に対して「この問題はそんなに考える問題ですか」と疑問を呈し、笑いを取っていました。その問題をただ単に「知っている」か「知らない」のかという知識の問題と考えているとそのような発言になってしまいます。


しかし私に言わせれば、漢字の送り仮名の問題は『考える』問題なので、その番組の司会者は、漢字の送り仮名を『考える』習慣がない、もしくは、『考える』方法を知らない人だなと思いました。せっかく『考える』方法を話しているのだから、よく聞いて勉強するべきですね。



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