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人はなぜ勉強するのか?(88)

 


 メタ認知の鍛え方①  「自分を疑え」「世界を疑え」



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前回の人はなぜ勉強するのか?(87)では、「メタ認知」が思考の深さに影響しているというお話をしました。


今回は、どうすればこの「メタ認知」の能力を鍛えられるか考えてみましょう。


自分の中の客観的な『自分』が自分を冷静に分析するのが「メタ認知」です。そう考えると、「メタ認知」を鍛えるということは、自分の中の客観的な『自分』を鍛えることに他なりません。


それでは、どうすれば自分の中の客観的な『自分』を鍛えられるのでしょうか。


私は、よく生徒に「自分を疑え」ということを言います。


問題を解いているときに、「この方法は間違っているかも」とか「計算ミスをしているかも」と疑うとそこで考えるようになります。


問題を解いているとき以外でも、「この勉強方法は間違っているかも」とか「この暗記方法より良い方法があるかも」と疑うことから、新しい方法を考えるきっかけになります。


自分を疑って、新しい方法を考えるときに、自分の中の客観的な『自分』と『会話』をします。


以前の人はなぜ勉強するのか?(86)でクイズ番組の解答者が、「違うな」とか「そうじゃないか」といった自分の思考に対して疑問を投げかけている場面で行われていた自分の中の客観的な『自分』との『会話』や、なぜその考え方が間違っているのか『自分』に対して説明する行為も内なる『自分』との『会話』と同じです。


自分を疑うことを続けていくと、自分の中の客観的な『自分』との『会話』が繰り返されます。自分の中の客観的な『自分』との『会話』が繰り返されると、考える習慣がつきます。


考える習慣がついてくると、「なぜ」「どうして」というワードが頭に浮かぶようになってきます。あらゆる問題に対して、なぜこうなるのか、どうしてこうならないのかを考えるようになります。


そういった疑問に対処するには、知識を増やす必要性を感じて知識欲が増すことも考えられます。調べるとか専門家に尋ねるとか対処方法を検討したり、工夫したりしていくことで、さまざまな選択肢の中からベストな選択をできるようになるでしょう。このように、少しずつ合理的な判断ができるようになっていくのです。


現代の若い生徒たちは、とても優しい心の持ち主が多くて、「疑う」という行為が苦手だという印象があります。


私は「自分を疑え」と言っていますが、実はさらに「世界を疑え」と言いたいくらいなのです。


世界を疑うためには、幅広い知識や誰もが納得する論理、合理的な判断が必要です。世の中で正しいとされていることを疑いもせず鵜呑みにしていると世の中の進歩・発展はありません。それどころか、人はなぜ勉強するのか?(4)人はなぜ勉強するのか?(5)でお話ししたように、だまされてしまうことも考えられます。


そうならないためにも、私たちは勉強して世界を疑うべきなのです。



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